Iターン読みました。おもしろかったです!
北九州が舞台だったので、おもわず手にとってみたら大ヒットでした。
北九州生まれ、北九州育ちのぼくが読んでも、「ありそうだな」と頷けるシーンがたくさんありました。
さすが北九州出身の作者が描いてるだけありますね。
ハラハラドキドキのストーリー展開なので一気に読めちゃいます。
ぼくも作者も北九州出身です。北九州モンの視点からみた感想を書いていきます。
目次
あらすじ
広告代理店の冴えない営業マン・狛江が単身赴任したのは、リストラ対象の北九州支店。思わぬトラブルでヤクザに絡まれ、大借金のうえ身売りの大ピンチに。鉄拳の雨と禁断のレバ刺し、爆弾を抱えたダイ・ハードな日常。生き地獄に陥った男のI(=自分)ターンとは!? 悲惨、暴力のち爆笑! 修羅場を踏みまくった狛江が到達するタフな境地が笑える、新感覚リーマン・ノワールの傑作!
全体的な感想
しがないサラリーマンがヤクザの抗争に巻き込まれる設定が良かったです。
サラリーマンとヤクザって無関係そうな存在ですけど、北九州が舞台なので妙にリアリティが感じられました笑
北九州でサラリーマン(特に広告代理店の営業マン)をやるのがマジで怖くなります…。
主人公の狛江がだんだん北九州に馴染んでいく様子は微笑ましくもあります。
前半から中盤にかけては「ありえるかも」と思える物語構成が続くので主人公に感情移入しながらグイグイ読めます。
ただ後半はいまひとつ共感ポイントに欠けました。
ヤクザの抗争が激化しすぎて、なぜそこにサラリーマンが巻き込まれているのか意味不明だなと思えたからです。
ストーリーについていけなくなった感があります。中盤まで読み応えがあっただけに少し残念でした。中盤までしっかり読んで、後半はサラーッと流し読みでしたね。
リアリティを期待して読むとガッカリするので、最初からフィクションとして捉えるべきですね。
北九州を理解しようとしなかった姿勢
北九州支店に左遷させられるまでまったく縁もゆかりもなかったからか、前半では北九州をド田舎扱いして溶け込もうとしなかったんです。
ただでさえ、博多とちがって北九州はよそ者を受け入れる地域じゃないのに、反発するような態度を示すので余計にタチが悪いです。
地方での営業のやり方をまったく理解しようともせず、東京のやり方をそのまま持ち込んでしまうせいで、取引先から反感を買ってしまいます。
情に訴えてくる地元の零細印刷会社の社長(土屋)に対して、仕事の質が低いことを理由にパタッと取引を辞めようとする姿勢はあまりにもドライです。
支店長として左遷させられた挙げ句、リストラ候補でもあったので焦りもあったんでしょうけど、まずは地方での立ち回り方をしっかり心得えるべきです。
反感を買ってしまったがゆえに、その後の波乱万丈なストーリーは自業自得でもあるんですよね。
狛江の態度はいかにも都会人といった風情で、なんかイラつくんですよ笑
もしぼくが土屋印刷の社長の立場なら、腹いせの1つや2つしたとしてもおかしくないです。
地方ではたらくには地方を理解することが大事だと教えてくれます。
北九州で反感を買うとどうなるか…わかりますよね?
修羅の国と恐れられる土地柄です。ヤクザが出てくるのは自然な成り行きですよね笑
電話番号の誤植がきっかけでヤクザと関わりをもつことに…。
2つのヤクザ組織に巻き込まれる展開はぶっ飛んでる気もしますけど、北九州が舞台なら辻褄が合います。
きさんくらすぞちゃ!(お前ボコボコにするぞ)が挨拶代わりの土地柄ですからね笑
狛江の性格が変化していく
ヤクザと関わりを持つうちに、だんだん凶暴化していく狛江の姿が印象的でした。
物語の終盤では部下がいる前で上司(高瀬)を殴り飛ばしちゃいますし…。
部下が上司に逆らうシーンはなんともいえない爽快感がありますね。
指示どおりに仕事をこなしたのに、評価されるどころか手柄を横取りされちゃたまったもんじゃないですよね。
ひょんなことから岩切組の舎弟になったことで、あきらかに人間が変わってます。
付き合うひとが変わると、人間なんてあっさり変わるもんですね。
うだつの上がらないサラリーマンから、ヤクザまがいの企業戦士と化していきます。
犯罪に加担することもいとわなくなります。
自分と家族を守るためとはいえ、リベートにも手を染めるし、ヤクザの舎弟としてはたらくようになるんですから。どんなWワークなんよ笑
生き残るためなら手段を選ばない…
トラブルを乗り越えるたびに人間としてのエグみが増していってます笑
狛江は良くも悪くも影響されやすい人物なんでしょうね。
とはいえちゃんと1本筋が通ってるからこそ、ヤクザにも気に入られるのかも。
北九州のことを受け入れた瞬間?
性格の変化とともに、食に対する見方も変わっていきます。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで、この街のものなら、なんでもケチをつくたくなる。だいたい豚骨ラーメンを喜んで喰うような土地柄が気に食わない。
この街のうどんとそばは味が薄くて、ダシにほのかな甘みがある。汁が真っ黒な東京に比べると、なんとも味気ない。
とんこつラーメンは大嫌い。うどんも合わない。
北九州の食文化にまったく興味を示そうとしなかったのに、北九州で知り合った人と付き合ううちに舌が変化していくんですよ。
印象的だったのは岩切に連れられてラーメン屋に入ったときのこと。
「うまいっ!」と叫んで汁まで飲み干したシーンです。
いつくもの修羅場をくぐり抜けたあとに食べるラーメンは格別だったんでしょうね。
北九州のことを好きになった瞬間とも捉えられて、なんか嬉しくなりました。
読んだあとはやたらと北九州に行きたくなりました。北九州ラーメンが食べたくなります。
岩切と2人で入ったラーメン屋はどこなんやろ?うーん、気になる…。